2025年5月9日に発表された日本製鉄株式会社(5401)の2025年3月期決算は、鉄鋼業界の逆風の中での粘り強い業績維持と、株主還元を重視する姿勢が見える内容でした。本記事では、特に「配当」に焦点を当てながら、業績のポイントや今後の投資判断について考察します。
会社四季報では2026年3月期の予想も出ているため、合わせて確認しても良いかと思います。
業績サマリー:減収減益も高い利益水準を維持
まずは、決算のハイライトから見ていきましょう。
- 売上収益:8兆6,955億円(前年同期比▲1.9%)
- 営業利益:5,479億円(▲31.4%)
- 親会社株主に帰属する当期利益:3,502億円(▲36.2%)
- 1株当たり利益(EPS):350.92円(前年596.59円)
中国経済の減速や世界的な需要鈍化を受け、鉄鋼価格が軟調に推移したことが収益圧迫の一因ですが、それでも3,500億円超の最終利益を確保している点は注目です。
減益でも「安定した配当」継続。160円配は据え置き
配当実績と推移
期末 | 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
---|---|---|
2023年3月期 | 170円 | 26.8% |
2024年3月期 | 160円 | 45.6% |
2025年3月期 | 160円 | 62.8%(実績) |
2026年3月期(予想) | 120円 | 予想利益に基づき変動 |
2025年3月期も減益の中で年間160円(中間80円/期末80円)の高水準配当を維持。配当性向は62.8%に上昇しましたが、減配せずに還元を継続した点は、株主志向の高さを感じさせます。
一方で、2026年3月期は減配(120円)を予想。これは想定純利益の減少(前期比▲42.9%)に伴うものですが、EPS191円に対して120円配であれば、配当性向は約62.8%で据え置きと見られます。
企業としては無理をせず、バランスをとった株主還元と言えるでしょう。
キャッシュフロー分析:原資はしっかり確保
株主還元の源泉となるキャッシュフローに注目すると、以下の通りです。
- 営業CF:9,78,593百万円(+1兆円規模)
- 投資CF:▲4,62,428百万円
- 財務CF:▲3,13,334百万円
営業キャッシュフローが非常に潤沢であり、配当(約1,600億円)を支払ってもなお余力がある状態。このため、現行の高水準配当は短期的には十分に維持可能と考えられます。
財務体質:純資産の積み増しと自己資本比率の改善
- 総資産:10兆9,424億円(+2.1%)
- 自己資本比率:49.2%(前年44.6%)
- 1株当たり純資産:5,150.56円(前年5,187.32円)
自己資本比率の向上や現金同等物の増加(6,72,526百万円 → 前年比+約50%)も確認されており、財務の健全性が一段と強化されていることがわかります。これは、配当や設備投資の持続可能性を判断するうえで非常にポジティブな材料です。
海外戦略と将来展望:U.S. Steel買収とインド事業拡大
2024年12月に発表されたU.S. Steel買収の影響は、今回の業績予想には織り込まれていませんが、グローバルでの成長余地を示す大きなトピックです。また、インドのArcelorMittal Nippon Steel India Limitedでの能力拡張や、原料資源の確保(豪州・カナダの鉱山権益取得)など、将来の競争力強化にも積極的です。
これらは中長期での収益改善要因となりうるため、2026年以降の業績V字回復にも期待がかかるでしょう。
投資家目線での評価:高配当+割安バリュエーション
2025年5月10日時点での指標を仮定して評価します。
- 株価:2,700円(仮定)
- 予想配当利回り:4.44%(120円配当)
- 予想PER:約14.1倍(EPS191円予想)
- PBR:約0.52倍(BPS5,150円基準)
PBRが0.5倍水準というのは、日本株の中でも「超割安」な部類です。
減益予想ではあるものの、財務とキャッシュフローが健全で、中長期での復配余地や海外成長のポテンシャルが高いことから、バリュー投資家にとっては魅力的な銘柄と言えそうです。
投資戦略アドバイス(2025年5月時点)
- 短期トレーダー:業績下方修正や中国リスクに敏感なため、ボラティリティ高めで注意。
- 配当利回り投資家:買いタイミングを分散(分割購入)でリスク低減しながら保有を検討。
- 成長株志向の投資家:U.S. Steelとの統合効果が可視化される2026年以降を待つのが無難。
まとめ:配当重視の投資家にとって「忍耐型の有望株」
- 減益局面でも安定配当を維持する株主還元姿勢
- 財務安定性と豊富なキャッシュフロー
- 将来の成長余地(U.S. Steel統合、インド展開)
- 株価指標面でも割安感が強い
もちろん、2026年3月期に向けては減配リスクや業績下振れリスクも存在しますが、企業の長期戦略と過去の実績から見て、「配当を受け取りながら持ち続けられる安心感」がある銘柄です。
鉄鋼業界という景気敏感セクターではありますが、その中で「質の高い高配当株」を探している方には、日本製鉄は引き続き注目すべき存在だといえるでしょう。
安定した配当を求める個人投資家にとって、長期的に保有するのにふさわしい銘柄だと言えるでしょう。
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