この記事では金利調整額(ファンディングコスト)の計算方法について徹底解説します。
CFD取引では未決済ポジションを翌営業日に持ち越すと金利調整額が発生します。この金利調整額は投資パフォーマンスを低下させる要因になる追加コストです。
計算方法を理解しておけば、各トレードで発生する追加コストをある程度把握できるようになります。
なお、CFD取引について詳しく知りたい人は『CFDとは?差金決済取引を理解して投資の幅を広げよう!』をご覧下さい。
金利調整額(ファンディングコスト)とは?
金利調整額の基本情報
CFD取引における金利調整額(ファンディングコスト)は、CFDブローカーによってオーバーナイト金利やキャリーコストなど様々な呼び方があります。
保有しているポジションを未決済の状態で翌営業日に持ち越すたびに発生する追加の費用です。
日本時間では午前7時、サマータイムには6時を起点にコストが生じます。
地域 | 夏時間開始 | 夏時間終了 | 冬時間開始 | 冬時間終了 |
---|---|---|---|---|
米国 | 3月 第2日曜 | 11月 第1日曜 | 11月 第1日曜 | 3月 第2日曜 |
欧州 | 3月 最終日曜 | 10月 最終日曜 | 10月 最終日曜 | 3月 最終日曜 |
ポジションと受払いの関係
CFD取引ではロングポジション(買い)を保有した状態で翌営業日に持ち越すと、金利調整額(ファンディングコスト)を支払うことになります。
一方で、ショートポジション(売り)の場合は、受け取ることができます。
注意点としては、当該国の指標金利が2%未満といった低金利の場合には、売りポジションであってもファンディングコストを支払う可能性があります。
デイトレードのように日計り取引であれば、両方のポジションでファンディングコストは発生しません。
ファンディングコストが発生する理由
ファンディングコストは下記の理由や要素で発生します。
金利水準の差異
保有するポジションが関連する市場や資産の金利水準の差異に基づいて計算されます。
例えば、通貨ペアのCFD取引では、異なる通貨の金利差を反映したファンディングコストが発生することがあります。
レバレッジ
CFD取引では、少額の証拠金をCFDブローカーに預けて大きな取引を行うことができます。これをレバレッジ取引と呼びます。
保有するポジションの実際の価値よりも少額の証拠金を預けるため、ブローカーはその差額を貸し付けることになります。
この貸付金の利息もファンディングコストに含まれます。
保有期間
CFD取引において、保有しているポジションを未決済のまま翌営業日に持ち越す場合、CFDブローカーはポジションを保有するために必要な資金を提供します。
この際、ポジションの保有期間に応じたファンディングコストが発生します。
ポジションを長期間保有するほど、ファンディングコストも増加します。
金利調整額(ファンディングコスト)の確認方法
各CFDブローカーによってファンディングコストは異なります。
そのため、利用するCFDブローカーのウェブサイトや取引画面を見て確認する必要があります。
例えば、サクソバンク証券であれば、各CFD銘柄の取引情報にキャリングコストが記載されます。
これがファンディングコストに該当します。
取引画面に記載がないCFDブローカーの場合でも、公式サイトを調べると出てきます。
「CFDブローカー名+金利調整額」などのキーワードで検索すると良いでしょう。
指標金利の確認方法
指標金利がファンディングコストに与える影響は大きいです。
各銘柄におけるファンディングコストが、どのように決定されているか各国の指標金利を確認する方法を記載しておきます。
もともと、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)が国際的な指標金利として使われていましたが、2021年12月31日をもって廃止されました。
代わりに、主要国では各自の代替指標金利が導入された背景があります。
アメリカ合衆国の指標金利
SOFR(Secured Overnight Financing Rate)
Federal Reserve Bank of NEW YORK(ニューヨーク連邦準備銀行)のウェブサイトで確認ができます。
イギリスの指標金利
SONIA(Sterling Overnight Index Average)
Bank of England(イングランド銀行)のウェブサイトで確認ができます。
ユーロ圏の指標金利
ESTR(Euro Short-Term Rate)
EUROPEAN CENTRAL BANK(欧州中央銀行)のウェブサイトで確認ができます。
香港の指標金利
HIBOR(Hong Kong Interbank Offered Rate)
THE HONG KONG ASSOCIATION OF BANK(香港銀行協会)のウェブサイトで確認ができます。
金利調整額(ファンディングコスト)の算出方法
一例として、FOREX.comが提示するルールをもとにファンディングコストを計算してみましょう。
ファンディングコストは、原資産の貸し借りにかかるコストを反映したもので、買いポジションの場合は関連する金利ベンチマークに2.5%を加え、売りポジションの場合は2.5%を差し引きます。
FOREX.com
買いポジションの金利調整額の計算方法
例えば、とある株式指数CFDを500円で1,000(1ロット)買いポジションで持ち、保有期間を経て終値が600円になった場合を考えます。指標金利は0.35%とします。
この場合、金利調整額の計算は次のようになります。
金利調整額:600円 × 1,000 × (0.35% + 2.5%) ÷ 365日 = 49.86円
したがって、この例では1日あたりの金利調整額は約49.86円となります。
保有期間に応じて、この金額を支払う必要があります。
売りポジションの金利調整額の計算方法(支払う場合)
例えば、とある株式指数CFDを500円で1,000(1ロット)売りポジションで持ち、保有期間を経て終値が600円になった場合を考えます。指標金利が0.35%とします。
金利調整額:600円 × 1,000 × (0.35% – 2.5%) ÷ 365日 = -27.12円
したがって、この例では1日あたりの金利調整額は約-27.12円となります。
マイナスの値が出る場合は、保有期間に応じてその金額を支払うことになります。
売りポジションの金利調整額の計算方法(受け取る場合)
例えば、とある株式指数CFDを500円で1,000(1ロット)売りポジションで持ち、保有期間を経て終値が600円になった場合を考えます。指標金利が3.00%とします。
金利調整額:600円 × 1,000 × (3.00% – 2.5%) ÷ 365日 = 16.44円
この例では、売りポジションの金利調整額は約16.44円となります。
保有期間に応じてその金額を受け取ることになります。
金利調整額やファンディングコストの計算方法、適用利率は各業者や取引プラットフォームによって異なる場合があります。取引を行う際には、各CFDブローカーの公式ホームページや取引条件を参照し、正確な情報を確認することが重要です。
金利調整額(ファンディングコスト)のよくある質問
金利調整額(ファンディングコスト)に関するよくある質問がいくつかあります。
- Qファンディングコストはどのように支払われますか?
- A
ファンディングコストは、取引口座から自動的に差し引かれることが一般的です。保有しているポジションの翌営業日にファンディングコストが発生する場合、その金額は取引口座の残高から引かれます。
- Q長期投資に与えるファンディングコストの影響は?
- A
ポジションを保有し続ける場合にファンディングコストが発生するため、CFDを使った長期投資は慎重に検討する必要があります。CFDによる長期投資は別の記事で解説しています。
- Qファンディングコスト以外にCFD取引でかかるコストは?
- A
銘柄によって取引手数料が必要な場合や、取引手数料は必要でないものの、スプレッドが発生することがあります。
また、トレードする銘柄やポジションの取り方によって権利調整額、価格調整額などの追加の費用が発生する可能性があります。