CFD(差金決済取引)は、株式や指数などの価格変動に連動したデリバティブ商品を幅広くトレードするために利用される取引手法の一つです。トレーダーは、商品の買値と売値の差を利用して利益や損失を計算します。差益部分を通じて損益を決定する仕組みです。
CFD取引では、この差益以外にも損益に影響を与えるものがあります。
その一つが『権利調整額』であり、CFD取引においてトレーダーが受け取るまたは支払う金額の調整を指します。
本記事では、CFDの権利調整額に関する基本的な概念、計算方法、およびトレーダーへの影響について詳しく解説します。
そもそもCFDがどのような投資方法か知りたい人はCFDとは?差金決済取引を理解して投資の幅を広げよう!をご覧下さい。
CFDの権利調整額とは?
権利調整額が発生する理由
CFDの権利調整額は、株式などの原資産が配当を支払ったり、特別な事情が発生した場合に、CFD取引の価格を調整するための金額です。
CFD取引では、実際の株式を所有するわけではないので、投資家は直接的な配当などの利益を得ることができません。
しかし、権利調整額は、この制約を考慮してCFD取引の価格を調整する役割を果たします。
特に、CFDの参照原資産の株式等において配当金・分配金の支払いやコーポレートアクションが行われた際に、株主が受け取ることができる権利をCFDトレーダーにも付与するためのものです。
投資家にとって重要な要素であり、正確な価格を維持するために設定されています。
権利調整額が発生する銘柄
CFDは貴金属や農業商品など幅広いデリバティブ商品をトレードできますが、すべての銘柄で権利調整額が発生する訳ではありません。
権利調整額が発生する代表的な銘柄としては、個別の株式が原資産価格となる株式CFD、NYダウや日経225などのインデックスを原資産価格とする株価指数CFDなどがあります。
権利調整額を「受け取る」か「支払う」かはどう決まる?
CFDの権利調整額は、買いポジションまたは売りポジションによって、「受け取る」か「支払うか」異なってきます。
買いポジションの場合
買いポジションを保有している場合、権利調整額を受け取ることができます。
例えば、株式CFDの買いポジションを持っている場合、その株式が配当を行った場合には、配当金の一部を権利調整額として受け取ることができます。
売りポジションの場合
売りポジションを保有している場合、権利調整額を支払う必要があります。
例えば、株式CFDの売りポジションを持っている場合、その株式が配当を行った場合には、権利調整額として配当金相当額を支払う必要があります。
CFD取引における権利調整額の受払いは、ポジションのタイプによって異なるため、注意が必要です。
CFDの権利落ち日はいつ?
CFDの権利落ち日は、原資産の権利落ち日と同じです。
権利落ち日とは、配当や株主優待などの特典を受けるためには、その日までに株式を保有している必要がある日のことを指します。
CFD取引においても、権利調整額はこの日を基準に計算されます。
CFDの権利調整額の計算方法
CFDの権利調整額は原資産の配当や価格変動に基づいて算出されるものです。
配当があった場合は配当金相当額が、株式の分割など特別な事情による価格変動があった場合は価格変動を反映した金額が権利調整額となります。
一般的に配当額については、以下のように計算されます。
株式CFDの場合の計算方法
配当金相当額 = 1株当たりの予想配当額 × (100 – 税率)% × 保有株式数
株価指数CFDの場合の計算方法
配当金相当額 = 対象指数構成銘柄の配当予定銘柄の配当金総額 × (100 – 税率)% × ポジションの取引ロット数
このように、配当金相当額は予想配当額に税率を適用し、保有株式数(株式CFD)または取引ロット数(株価指数CFD)で乗じることで計算されます。
なお、税率は各国の税制によって異なりますので、具体的な税率については適用する国の税法を確認してください。
また、実際の配当額と予想配当額が異なる場合には、ポジションの決済後でも過不足分の受払いが発生する可能性があります。
CFDの権利調整額のよくある質問
- Q「金利調整額」と「配当相当額」は同じものですか?
- A
権利調整額と配当相当額は、厳密には意味合いが異なります。
権利調整額は、株式やその他の金融商品において、株式分割、配当支払いなどのイベントが発生した際に、CFDポジションの価値に影響を与える調整金額です。この金額はCFDプロバイダーと取引者の間で調整され、ポジションの保有者に対して支払われるか、または差し引かれることになります。権利調整額は、株式の実際の配当や優待とは関係がなく、単にポジションの値を調整するための金額です。
配当相当額は、実際の株式の配当に相当する金額です。CFD取引では、実際の株式を保有していないため、株主としての配当を直接受け取ることはできません。しかし、一部のCFDプロバイダーは、保有しているCFDポジションに対して配当相当額を支払うことで、実際の配当に相当する利益を提供する場合があります。
したがって、CFD取引においては、権利調整額がより正確な表現であり、ポジションの価値の調整を反映していると言えます。
- QCFD取引では株主優待はもらえますか?
- A
CFD取引では株主優待を受けることはできません。日本の上場企業では、現物株の保有者に対して株主優待を提供する場合がありますが、CFD取引では実際の株式を保有していないため、株主優待を受けることはできません。
- Q権利調整額はどのように受け取るのですか?
- A
CFDブローカーにあるトレーダーのアカウントに反映して受け取ることが一般的です。権利調整額の受け取りについては、CFDブローカーのほうで処理してくれるので、特別な手続きやリクエストは必要ありません。配当落ち日や特別な事象が発生した後、取引終了時にアカウントに自動的に反映されます。
- Q権利調整額以外のコストはありますか?
- A
CFD取引では、トレードするCFD銘柄とポジションの種類によって『価格調整額』や『金利調整額』が発生することがあります。