CME GroupのFedWatch Toolは、債券市場で活躍するトレーダーや投資家にとってとても有用なツールです。
FedWatch Toolは、シカゴ商品取引所(CME)の先物価格に基づいて、米連邦準備制度(Fed)の政策金利の変更の可能性を示します。
このツールを利用することで、今後のFedの金利決定に関する市場の見方を理解する事ができます。
米国は国債市場と株式市場ともに世界最大の規模であり、金利上昇は株式にとってアゲインストであり、金利下落は株式にポジティブです。
つまり、金利変動に敏感な債券や株式を扱う際、FedWatch Toolで提供されるデータを解釈することは、取引戦略において重要になります。
CME Groupとは?
CME Groupは、世界最大級の金融市場を運営する会社で、先物およびオプション市場で知られています。様々な商品や金融ツールが取引されており、投資家がリスク管理を行ったり、投資機会を見つけたりする場所として利用されています。
一般的なネット証券で取り扱いのないコモディティや国債などのデリバティブ商品を取引するCFDトレードの情報収集にも有用なマーケット・データも提供されています。
初心者のためのFedWatchツール活用ガイド
CME Groupのこのページにアクセスすると、米連邦準備制度(Fed)の政策変更の可能性を予測するFedWatch Toolを閲覧できます。
①ページにアクセスする:以下のトップ画面が表示されるでしょう。
トップ画面には、次のFOMCミーティングまでの日数がカウントダウン形式で表示されています。
FOMCミーティングまでに先物市場のトレーダーたちが金利予測を固めていきます。
それでも当日になって、FOMCから発表される金利がトレーダーたちの予測から外れて債券と株式の相場が荒れることがたまに発生します。このあたりが債券相場の難しであったり、探究心をくすぐる部分です。
②FedWatch Toolの画面までスクロールして現行の金利を確認する:
FedWatch Toolのデフォルト設定は左側のツールバーの『Current(最新)』になっています。その下には『Compare(比較)』と『Probabilities(可能性)』が並びます。
まず『Current』を確認すると、画面の中央上に「Current target rate is 525-550」と表示されていますね。これが現在の米国の政策金利(FFR)です。
この現行のFFRを基準に金利相場を予想するため、現在の金利範囲を把握していない場合には毎回確認するようにしましょう。
FedWatchツールの種類と見方
CME Groupの公式サイトには先物やCFD取引に役立つ情報が多くあります。
FedWatchツール:Current
Target Rateを確認するツールの1つ『Current』は、直近のFOMCで設定されるだろう金利範囲の可能性を示します。
以下の例では、2023年1月31日のFOMCでFFR525−550の金利範囲が84.5%の確率で設定されると先物市場の参加者が予想していることを意味します。
右上のProbabilitiesの『No Change(変化なし)』が最も高い数値のため、現行の政策金利を維持する可能性が高いことが分かります。
ちなみに、Easeが利下げ、Hikeが利上げのことです。
FedWatchツール:Compare
Target Rateを確認するツールの1つ『Compare』は、直近のFOMCで設定されるだろう金利範囲の可能性が現在・前日・一週間前・一ヶ月前からどのように変化したかを示します。
下図の金利範囲525−550を見てみると、1ヶ月前の予測を示すグラフ(1M)が最も高く、一週間前(1W)、前日(1D)と減少していきますが、雇用統計を受けて現在(Current)の予測が前日を上回る様子が分かります。
FedWatchツール:Probabilities
Target Rateを確認するツールの1つ『Probabilities』は、今後の各FOMCで設定されるだろう金利範囲の可能性をテーブル形式で示したものです。
下図では縦軸がFOMC日程、横軸が金利範囲で、表中の%が設定される確率を意味しています。水色にハイライトされているセルが高確率になっていることを表します。
直近のFOMCでは設定されるだろう金利範囲がある程度見定まり、特定の金利範囲セルに数値が集中します。(それでもFOMCで発表される金利範囲が予想と異なり、市場にショックが発生することがたまに起こります)
一方で、10ヶ月ほど先のFOMCの金利範囲の予想は、先物市場の参加者の一体感が無いことが見て取れます。
例えば、2024年12月18日に予定されるFOMCで設定されるだろう金利範囲は375−400が高確率ですが、それでも37.5%であり投資家はまだ自信が無いようです。
私が運営しているX(旧Twitter)では、このあたりのFedWatchツールを利用して、より分かりやすく金利情勢をまとめています。
こちら米国株の大納会後のCMEのデータから作成した2024年の金利予想です。
— ほろほろ(投資歴14年) (@investfrom30) December 30, 2023
縦軸は金利範囲
横軸はFOMC日程
表中の数値は可能性を%化
1月維持
3月利下げ
5月〃
6月〃
7月維持
9月利下げ
11月利下げ?(自信少なめ)
12月維持?(〃)
債券投資家は来年は5回の利下げを期待しながら取引終了 pic.twitter.com/6BSS91Uzvw
ドットプロット(Dot Plot)
あまり知られていませんが、CMEのFedWatchツールではドットプロットの確認もできます。
FOMC(連邦公開市場委員会)のドットプロットは、アメリカ合衆国の連邦準備制度において、連邦準備理事会(FRB)のメンバー及び地区連邦準備銀行の総裁たちが、短期金利の将来の道筋に対する自身の予測を示す一種の視覚的ツールです。
このデータは、FOMCのメンバーがどのように金利が動くと予想しているかを示し、市場参加者や政策立案者に対して貴重な情報です。
ドットプロットは『Chart(チャート)』と『Table(テーブル)』の2種類が利用できます。
FOMCの関係者の金利予測に対する考え方が理解できるため、ドットプロットの更新タイミングでは把握が必須です。
例えば、ドットプロットでは2024年の利下げ回数が3回と予想されているのに、先程紹介したFedWatchツールで市場関係者は6回の利下げを期待している場合、そこには3回分の思惑の違いがあることになります。
このあたりの機微の変化を読み取れるようになると、債券と株式市場で上手く立ち回れることが増えてくるはずです。
とはいえ、ドットプロットの読み取りは複雑です。私が運営しているX(旧Twitter)ではドットプロットの変化の解釈をサマリーにしてお伝えしています。良ければフォローして利用してくださいね。
画像は最新のドットプロットを見やすいようテーブル形式にしたものです。
— ほろほろ(投資歴14年) (@investfrom30) December 30, 2023
このドットプロットは、19人のFOMCメンバーがどのように金利が動くと予想しているかを可視化したものです。投票は匿名で実施されます。… pic.twitter.com/94cpvY5hSI
まとめ
CMEグループのFedWatchツールやドットプロットは金利政策の変動を予想するために非常に有用な情報源です。
日々の金利と株式の変動、政治と経済ニュースと照らし合わせながらウォッチすることで、少しじつツールを使いこなせるようになるでしょう。
とはいえ、これらのツールは万能ではありません。どちらかと言えば、投資の基礎をしっかり固めてから利用するアドバイス・ツールです。