VIX指数(恐怖指数)についてサクッと知りたい方向けの記事です。
この記事では、株価の急落時に注目されるVIX指数を分かりやすく解説します。
VIX指数で分かること
- 結論1:投資家の現在の心理状態
- 結論2:近い将来の株式動向
VIX指数とは?恐怖指数について解説する
米国株が大きく下落するたびに『VIX指数の上昇』が注目されますが、そもそもVIX指数とは一体どのようなものなのでしょうか?
S&P500を対象にした、オプショントレードの「今日以降30日間の値動き」を予想した指標がVIX指数です。これはシカゴ•オプション取引所で算出されています。
今日以降30日間の値動き とは?
これはインプライド•ボラティリティーという名前が付いています。
インプライドとは、日本語で「暗に示された」という意味です。ここでは、今日以降の30日間の値動きがどうなるか予想することを意味しています。
ボラティリティーとは、日本語で「変動幅」という意味です。
株価の値動きの激しさを示す時に使われたりします。短期間で値動きが大きいことを「ボラティリティーが大きい」と言ったりします。
つまり、インプライド・ボラティリティとは近い将来のS&P500の変動率の大きさを暗に示した指標と言えます。
VIX指数の平常値
VIX指数の正常値は10〜20くらいと言われているようです。
株価が安定している時には、この辺りの数値を行ったり来たりしています。
一方で、オプション市場での流動性が高まるとVIX指数は一気に上昇しますので先行指数としても利用されます。
S&Pとシーソーのような関係
VIX指数とS&P500をチャートで見比べるとシーソーをしているような感じになります。片方が下がれば、もう片方が上がるという関係にあります。イベントが発生したタイミングでは、その関係性が如実に現れます。
こちらはS&P500とVIX指数のグラフです。
S&P500が下落すると、それに少し遅れてVIX指数が急騰する様子が分かりますね。
- 2010年ーギリシャ債務危機(VIX指数46.88ポイント)
- 2020年ー新型コロナウイルス (VIX指数80ポイント)
上記のようなパニック売りの様相を呈したトレンドでは、特にVIX指数が急上昇することは良く知られています。VIX指数が恐怖指数と呼ばれる理由は、投資家が恐怖のあまり株式を売ることでVIX指数の上昇に貢献するからです。
株が売られるほどVIX指数は上がる
VIX指数が上昇する理由は『オプション取引』の世界にあります。普通の個人投資家には不要ですが、VIXとは『デリバティブ』の投資商品です。
この世界ではコール(買う権利)とプット(売る権利)で取引が行なわれています。その権利を買うために利用される指標の一つがVIXです。
VIX指数に与える影響はご覧のとおり
- コールを買う:VIX指数は上がる
- プットを買う:VIX指数は上がる
- コールを売る:VIX指数は下がる
- プットを売る:VIX指数は下がる
コールもプットも買われるほどVIX指数を上げる原因になりますが、特にプット(売る権利)が買われているときの影響が大きいとされます。それは投資家が下落に対してより敏感だからです。
プット・オプションとは将来のある時点で株式を買ったり、売ったりできる権利のようなものです。
プット(売る権利)が買われVIX指数が急上昇する局面というのは、将来の下落に対して保険を持っておきたい投資家が増えていることを意味します。言い換えれば、今後の株価は下落トレンドだと考えている投資家が増えているタイミングだと言えます。
多くの投資家がプット・オプションを求めることでオプション料が上がるため、結果的にVIX指数の上昇に繋がります。平たく言えば、保険料が高くなるとVIX指数が上昇するイメージです。
落ち着きを取り戻すとVIXも低下
パニック売りが落ち着いてくると、売られすぎと考える投資家が買い戻しを始めます。さらに、空売りしていたヘッジファンドの大量の買い戻しも入ります。オプションの世界でも同じです。
このように、市場に落ち着きが戻りだすと、VIX指数は正常値に低下していきます。
VIX指数にまつわる勘違い
VIX指数が暴騰すると株価が急落すると言う人がいますが、それは間違いです。つまり預言書のようにVIX指数を使うことはできないんです。
VIX指数を使って今後のボラティリティを予測することはできますが、初段階の急落を予測することはできない
と、私は考えています。
オプションの取引がVIX指数に影響を与えるため、VIX指数の急上昇と株価の下落は同じタイミングでは発生しないことが理由です。
オプション取引をやっている機関投資家というのは、刻々と変化する市場に対して機敏に対応しています。大量のプット・オプションを次の日には解消しているなんてことも当然あるわけです。
重要なことはVIX指数に影響を与えやすい機関投資家の予想が必ず当たるわけではないということです。
VIX指数の歴史
過去のパニック相場で、どれくらいVIX指数が上昇したか、その歴史をまとめておきます。
VIX指数 | 原因 | 日付 |
83.56 | 新型コロナウイルスのパンデミック | 2020/03/17 |
50.30 | 米国雇用統計 | 2018/02/06 |
53.29 | 中国経済の失速懸念 | 2015/08/24 |
46.88 | ギリシャ国債のデフォルト危機 | 2011/10/04 |
47.56 | 米国債の格下げ | 2011/08/09 |
48.20 | ギリシャ国債への懸念発生 | 2010/05/21 |
89.53 | 世界金融危機 | 2008/10/24 |
42.16 | リーマンショック | 2008/09/18 |
34.40 | イラク戦争の勃発 | 2003/03/12 |
49.35 | アメリカ同時多発テロ | 2001/09/21 |
VIX指数をトレードに活かすには?
VIX指数は短期的または中期的な相場のボラティリティ変化を見極める指標として有用です。
そのため、短期トレードに向いているCFD(差金決済取引)との組み合わせが良いでしょう。
市場のリスク環境を把握する
CFDトレードでは、相場の急激な変動がトレードのチャンスになりえます。
VIX指数が急上昇している場合、市場はリスクが高まり、不安定な状態が続いていることを示しています。
逆に、VIXが低下している時は、市場が安定しており、価格変動が少ないことが予想されます。
VIXが上昇している時
市場は大きな変動が予想されるため、短期的なボラティリティを活用して、CFDトレードでの利益を狙うことができます。このような時期には、高いリスクを取るトレーダーが多く、取引機会が増えることがあります。
VIXが低下している時
相場が安定しているため、レンジ相場が続く可能性があります。この状況では、レンジトレードや順張りの戦略が有効になることが多いです。
逆相関を利用して取引する
VIX指数は、S&P500の値動きと逆相関する傾向があります。
つまり、S&P500が上昇している時はVIXが低下し、S&P500が下落している時はVIXが上昇しやすいです。この逆相関を活用して、短期的なトレード戦略を立てることができます。
- VIXが急騰:市場が不安定で、S&P500が下落する可能性が高いと予想されるため、S&P500のCFDをショート(売り)でエントリーするチャンスです。
- VIXが低下:市場が安定しており、S&P500が上昇する可能性が高いため、S&P500のCFDをロング(買い)でエントリーするタイミングと考えられます。
関連記事:CFDとは?差金決済取引を理解して投資の幅を広げよう!
VIX指数関連のETFを用いた投資の価値は?
VIX指数に連動したETFが日本市場と米国市場に上場しています。
- VIX短期先物指数(1552)
- VIX中期先物指数(1561)
- iPath Series B S&P 500 VIX S(VXX)
- プロシェアーズ・ウルトラVIX短期先物ETF(VIXY)
私も何度かVIX連動ETFで短期勝負をしたことがあります。その経験からあまりおすすめはしません。
VIX指数に連動したETFの投資が難しい理由
VIX指数は相場が恐怖を織り込む瞬間に暴騰する習性があります。そのため、事前に相場を張っておく必要が必然的に出てきます。また、VIX指数ETFは運用コストが高いため、長期保有には向いていません。
VIX指数ETFにではなく、VIX指数の変動から考えられるS&P500のボラティリティを利用して株式指数のトレードをしたほうが良いと思います。
VIX指数に関するよくある質問
- QVIX指数は必ず当たりますか?
- A
いいえ。VIX指数はオプション市場での需要増加などを結果的に反映した数値です。そのため、変動率の予想はある程度可能ですが、実際のS&P500の変動を正確に示すことはありません。
初心者ですとVIX指数の数値だけに気を取られてしまう場合もあるでしょうが、投資やトレードで大切なことはもっと基本的な内容です。
覚えておくべき投資のルールを以下の記事でまとめていますので、よければご利用ください。
- QVIX指数は日経平均にも影響がありますか?
- A
直接的な影響はありません。しかし、VIX指数が急上昇するとS&P500が下落することが多いため、日経平均がつられて下落する場合は考えられます。
また、日経平均にも『日経平均VI』という日本版の恐怖指数が存在しますので、そちらの指標をウォッチすることをおすすめします。
- QVIX指数と他のセンチメント指標を組み合わせた方が良いですか?
- A
VIX指数は株価の先行指数ではありますが、必ずしも精度が高いわけではありません。
そのため、RSIといった市場の過熱感を示すものや、MACDという方向性を示すもの、市場全体の強欲を示すFear&Greed Inedexというセンチメント指標との組み合わせは有効だと思います。
また、移動平均線などのテクニカル指標も合わせて利用すると良いパフォーマンスにも繋がるかもしれません。