高配当銘柄を選ぶ際のポイントを抑えよう
バイ・アンド・ホールドを好む、いわゆるバリュー投資家が気にするのが配当利回りというものです。
配当利回りの算出方法にはいくつかあるようですが、当サイトでは下記のように定義しています。
- 期末時点の株価に対する年間配当金の割合
(例)期末時点の株価が1,000円で年間配当金が50円の場合は50円÷1,000円=5%(配当利回り)となる。
配当利回りが高ければ高いほど、年間を通して株主に対して還元される配当金が増えることになります。
高配当銘柄を探すことは非常に簡単です。証券サイトから株式銘柄のスクリーニングを行い、配当利回りの高い方から順番に並べ替えるだけで瞬時に見つけ出すことができます。
ただし、どういった理由でその銘柄が高配当なのか、株式を所有する前に熟考してほしいと思います。
高配当の理由を探る
高配当銘柄たる理由には大きく分けて以下のようなものがあります。
- その銘柄由来の内因性によるもの
- 外部環境から影響を受ける外因性によるもの
少し漠然としていて分かりづらいかもしれませんが、 株式銘柄というものは、 これら一方または両方の影響を受けて、ときに高配当銘柄と化します。
内的要因と外的要因のそれぞれの影響を確認していきます。
内因性の影響を受けた高配当銘柄
当サイトでは、その株式銘柄が自身の株価に影響を与えるものを内因性の影響と定義しています。
- 長期間に渡り増配を継続
- 一時的に株価を低下させるような内部インシデントの発生
- 記念配当
長期間に渡り増配を継続
バイ・アンド・ホールドによって配当金を得ることを目的にする投資家なら、こういった内因性の影響を持つ株式銘柄を所有することが最も好ましいかもしれません。
連続増配の尺度は投資により異なりますが、5~10年連続で増配をしている企業は投資家への還元を積極的にしているといえます。
その代表例はジョンソンアンドジョンソン(J&J)です。同社は10年以上に渡って増配を続けています。バイ・アンド・ホールドの投資家なら誰しもが知るバリュー銘柄です。
グラフ1は2010~2018年までの推移でありますが、同社は2010年より前から増配を続けています。
多くの投資家にとって、この過去の実績がJ&Jを所有する大きな理由となります。
連続増配であるものの、株価の上昇によって、ここ最近は配当利回りが下がってきています。
しかしながら、グラフ2にあるように、直近の配当利回りは2.79%となっていますので、まずまずの高配当銘柄と言えます。
安定した配当を得たいのなら、連続増配記録と配当利回りの推移については最低限事前に確認しておきたいポイントです。
一時的に株価を低下させるようなインシデントの発生
最近では菅官房長官の携帯電話料金への言及でソフトバンク、ドコモ、auの携帯電話会社の株価が急落しました。フランス政府の指示の下ルノーによる日産自動車の子会社化の噂、カルロス・ゴーン日産自動車元会長の電撃逮捕など、ある日突然、株価は急落することがあります。
ここで重要なのは、その問題が一時的なもので近い将来解消されるかということです。
実際に、上記の携帯電話会社の株価は概ね元の水準に戻っています。投資家がこの問題は一時的なものであり、将来的な企業成長に対して影響が少ない、またはバックアップのプランが用意されていると判断しているためです。
このような株価の下落時に、うまく株式を所有できれば高配当銘柄になることがあります。
グラフ3(架空の銘柄)の株式は長年に渡り年間配当50円を継続している企業のものです。2009年に株価の急落を受けました。しかし、経営を揺るがすようなインシデントは無かったため配当は継続されています。そのことにより、配当利回りが一時期において暴騰している様子が分かります。
このような銘柄を探し当てるためには、配当記録、配当利回りの推移、配当金に充てることが可能なフリーキャッシュフローの確認が必要になってきます。
会社の経営を根本から揺るがす不正経理や不適合商品の販売などの重大なインシデントによって発生する株価の急落と、それにともなう表面利回りの上昇です。
記念配当
記念配当は配当利回りを押し上げる効果を持ちますので、高配当銘柄と勘違いして安易に所有してしまう投資家がいます。
配当記録と配当利回りの推移を確認すればすぐに見破れます。
外因性の影響を受けた高配当銘柄
当サイトでは、外部環境の変化によって株価に影響を及ぼすものを外因性の影響と定義しています。
- 景気転換の影響
- 地政学的リスクの上昇
- 同業他社の株価に追従
外因性については上記のもの以外にもありますが、ここでは景気後退による影響を説明します。
景気転換によるもの(特に景気後退・リセッション)
景気の転換時期というのは10年ほど循環が良く(好景気)、その後2~3年ほど循環が悪い(不景気)というサイクルが存在すると言われています。
特にリセッション(景気後退)の時期には、経済活動が減衰するため、企業の業績下方修正が多く発表されます。それにより、購入した株式の株価上昇が期待できない上に、全体的な出来高数も減少するため株式の需要が減少します。需要の減った株式を早く売却したい投資家の数が増えれば、日に日に株価も減少していきます。
しかし、景気後退時期を脱し、再び好景気となれば、今度は逆に業績上方修正が多く発表されるようになります。業績の回復した企業は配当を増やすことができ、軒並み株価も上昇していきます。
グラフ4では2回のリセッション時期があります。それにより、大幅に株価が下落しています。一方で配当利回りはこのリセッション時期にのみ大幅に上昇していることが分かります。
実はこのグラフは2000~2018年までの日経平均株価です。それに毎年の年間配当を500円と仮定して算出しています。
2008~2012年は超円高による民業圧迫、リーマンショック、東日本大震災などの世界的なリセッション、地政学的リスクの上昇など逆風が吹き荒れた時期でした。
しかし、このリセッションの間にうまく株式を取得していれば、高配当銘柄になる可能性が高いと言えます。
REIT(不動産投資法人)
オフィスやホテル、最近では病院などの医療施設といった実物資産(不動産)に対する投資をREIT(不動産投資法人)が発行する証券を購入することでできるようになっています。
収益の柱になるものは、主にリース料(いわゆる賃貸料)であります。
REITの特徴は、必要経費を差し引いた90%を分配に回すことで法人税が免除されることにあります。
結果的に、物件稼働率が高いREIT証券の配当利回りは、一般的な証券よりも高いことがあります。