この記事ではETF(上場投資信託)のメリットとデメリットを個人投資家の目線で説明していきます。
ネットには同様の記事がたくさんありますが、証券会社の目線で書かれたものが多い印象を受けましたので、個人がETFに投資をする時の安全な方法に繋がればと思います。
この記事の内容
- そもそもETFってなに?
- ETFのメリット
- ETFのデメリット
- ETFは手数料を減らすが正義
- ETFの長期投資はデメリット?
- ETFを投資信託と比較すると?
- ETFに向いている人・向いてない人
そもそもETFってなに?
ETFのメリットとデメリットを解説する前に、そもそもETFとは何か?から説明をしていきます。
ETF(上場投資信託)は株式市場で取引できる投資信託の一種で、その取引の手軽さから人気沸騰の金融商品です。
ETFはパッケージ商品
ETFは日経平均株価などの総合指数と成績が連動するように、運営会社によってポートフォリオが編成されます。
例えば、『日経平均連動型ETF』に投資すれば、日経平均株価を構成する日本の大企業225社に間接的に投資ができます。
これは、いろいろな品が入った詰め合わせ(パッケージ)商品を購入するイメージに近いと言えます。
20世紀最大の発明
ETFという投資商品が開発されたのは、1990年のカナダ証券取引所に上場したToronto 35 Index Participation Units 35(TIPS35)が世界初と言われています。
その後、世界中に様々なETFを生み出すきっかけとなったのですが、この記事で紹介するETFのメリットが功を奏してか、「ETFは20世紀最大の発明」と言われるまでになっています。
ETFの基本的な情報が知りたい人は「ETF(上場投資信託)とは? 【ETFの仕組みを解説】」という記事をどうぞ。
ETFのメリット
そんな『世紀の発明』と称されるETFのメリットを解説していきます。
- 投資商品の分散が手軽にできる
- 投資時期の分散が手軽にできる
- 市場の平均点を取れる
- 少額投資ができる
- リバランスが不要
- リアルタイムの取引ができる
投資商品の分散が手軽にできる
投資のリスクを減らす方法に『投資商品の分散』というものがあります。
個別の企業に一点集中した投資をすると、株価が急落した時に資産を大幅に減らす可能性があります。
日経平均連動型ETFなら225銘柄のパフォーマンスが集約されるため、下のイラストのように、C社とD社の急落をB社とG社の急騰でカバーでき、リスクを減らす動きが現実できるのです。
もしも、日経平均株価を構成する銘柄すべてに投資しようとすると、資金が数億円必要ですので、ETFの手軽さは良く分かりますね。
カントリーリスクも減らす
カントリーリスク(地政学的リスク)とは、為替変動などの通貨が原因で投資商品の価値が変動するリスクのことです。通貨価値の変動は、その国の経済失速や債務不履行(デフォルト)などが影響すると言われています。
投資先の国を複数にすれば、こういったリスクを減らすことができます。
ETFには『先進国ETF』『新興国ETF』などの広範囲の経済圏をカバーした商品が存在しており、手軽にカントリーリスクを減らすことも可能です。
さらに、ETFプロバイダーのバンガード社が提供するバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)に投資をすれば、わずか70ドル前後で世界中の株式に投資をすることができます。
投資時期の分散が手軽にできる
投資のリスクを減らす方法には『時間の分散』という方法もあります。
これは一度に投資をするのではなく、間隔をあけて定期的に投資をしていく方法です。
ドルコスト平均法と呼ばれるこの手法は、定期投資をすることで、評価損益の増減幅が縮小していくことを期待できます。
後ほど紹介するように、ETFの株価はそこまで高くありません。
そのため、投資資金のやり繰りが必要な個人投資家でも、時間を分散した定期的な積立投資がしやすいと言えます。
市場の平均点を取れる
ETFはパフォーマンスの観点から考えても優秀な投資商品です。
例えば、日経平均連動型ETFに投資すれば、基本的に日経平均そのもののパフォーマンスを得られることになります。
でも、平均点しか取れなかったら損しませんか?
もっと儲けを出したい人もいると思いますけど?
確かにその可能性はあります。
しかし、それは投資の時期にもよりますので、何がもっとも正しいのか判断をするのは難しいかもです…。
ただ、平均点が取れるからこそ、投資パフォーマンスが改善する場合もよくあります。
例えば、コロナショックのあった2020年3月18日から7月20日までの日経平均株価とトヨタ自動車のパフォーマンスはご覧のとおりです。
銘柄 | 3/18 | 7/20 | パフォーマンス |
---|---|---|---|
日経平均株価 | 16,552 | 22,884 | 138% |
トヨタ自動車 | 6,395 | 6,775 | 106% |
パフォーマンスだけで見れば、日経平均連動型ETFに投資するほうが、成績が良かったことになります。
このように市場の平均点を取れることは、安定した投資に繋がる側面があるんです。
少額投資ができる
ETFは1口や10口などの単元未満株として、投資ができる商品が多くあります。
結果的に、投資に必要な資金を抑えることができるため、少額投資が可能になります。
1口から投資できる代表的な日経平均連動型ETFはご覧のとおり。
ETFで配当を受け取りたい個人投資家の方は、持ち株数に注意が必要です。
配当金を受けたいなら
ETFから配当金を受けたい場合には、10口や100口などの最低保有株数が設定されていることがありますので、事前に確認した方が良いです。
リバランスが不要
ETFは投資信託の派生商品ですので、ポートフォリオの銘柄入替や資産管理はすべて管理会社がやってくれます。
特に、リバランスは投資経験の豊富な投資家でもハードルが高いと言われています。個人でやると、タイミングの見計らいが難しいことや、莫大な売買手数料が発生することが主な理由です。
その点ETFなら、個人投資家として必要なことは、
- どの指数のパフォーマンスを目指したいか考える
- そのETFに投資する
- 売却のタイミングを考える
と非常にシンプルな手順だけです。
リアルタイムの取引ができる
ETFは株式市場が開いている時間なら、いつでも売買が可能です。
投資したETFの評価損益もリアルタイムで確認ができますので、投資の状況が分かりやすいと言えます。
これって普通のことじゃないの?
と思われるかもしれませんが、投資信託の場合、取引回数は1日1回で、評価損益も1日1度だけ更新されます。
評価損益を細かく確認したい個人投資家はETFの方が、その希望に応えてくれるということです。
ETFのデメリット
個人投資家にとってメリット多めのETFですが、少しながらデメリットもあります。
デメリットの解消方法と合わせて、説明をしていきます。
- 運用管理費が発生する
- インカムゲインは少なめ
- 株主優待を受けられない
- 投資の勉強になりにくい
運用管理費が発生する
ETFは管理会社の商品に投資をするため、個人投資家は『運用管理費』と呼ばれる手数料を支払う必要があります。
これは個別銘柄への投資では発生しないため、ETFに特有のコストと言えます。
同じサービスでも手数料が違う
ポイントは同一サービスでも手数料が証券会社で異なる点です。
例えば、日経平均連動型ETFで検索すると、たくさんの証券会社から似たような商品が提供されていることが分かります。
一方で、同じようなサービスなのに運用管理費の利率は、それぞれの提供先で異なります。
そのため、コストを気にせずに投資してしまうと、投資パフォーマンスを下げる原因になるため注意が必要です。
このデメリットの解消方法
運用管理費だけ安ければ良いということではなく、安全に投資が行えるかも重要です。
同様のサービスをどのように選定するかは、こちらのチェックポイントを比較すると良いでしょう。
項目 | チェックポイント | 効果 |
---|---|---|
運用管理費 | 安いほうが良い | 投資パフォーマンスが上昇 |
純資産総額 | 多いほうが良い | 上場廃止リスクが減少 |
出来高数 | 多いほうが良い | 売買取引がスムーズ |
運用期間 | 長いほうが良い | 投資家から信頼されている |
提供先の信頼性 | 高いほうが良い | サービス継続性の向上 |
このあたりのチェックポイントは他のETFに投資するときも大切です。
全ての項目に合致すれば最高ですが、そういったETFは稀な存在ですので、少しも有利なETFを選べるように、事前チェックは重要かと思います。
インカムゲインは少なめ
インカムゲインとは、配当など株式を保有していることで得られる利益のことです。
ちなみに、値上がり益はキャピタルゲインと呼ばれており別物です。
ETFは総合指数のパフォーマンスを目指すため、インカムゲインも平均値となります。
一般的にETFに含まれる銘柄数が増えるほど、よりパフォーマンスが平準化されるため、得られるインカムゲインも減少しやすいと言われています。
例えば、上場インデックスファンド225(1330)とトヨタ自動車の2019年7月20日〜2020年7月20日の利回りを比較するとこのようになります。
銘柄 | 利回り |
---|---|
上場インデックスファンド225(1330) | 1.69% |
トヨタ自動車(7203) | 3.57% |
こう見ると、他の低配当銘柄がトヨタ自動車の配当利回りの効果を押し下げているとも言えますね。
このデメリットの解消方法
ETFの投資でインカムゲインを上げたいという人は、高配当ETFを利用すると良いでしょう。
このETFの特徴は、高配当企業だけを集めてポートフォリオを組んでいるところです。
平均利回り3%〜5%(海外のETFではなんと7%)ほどあります。
このあたりは高配当ETFとして有名どころです。
株主優待を受けられない
株式投資をする目的に『株主優待』を期待する個人投資家は多いはず。
ETFは直接その企業に投資をする訳ではないので、株主優待を個別に受けることはできません。
株主優待の他にも…
ETFに投資することで失うものは、株主優待だけではありません。
その企業の経営方針を決める株主総会に参加することはできず、結果的に『議決権』も得られません。
このデメリットの解消方法
どうしても欲しい株主優待があるなら、ETFを中心に投資をして、安全を確保した状態で、個別銘柄にも投資する方法がおすすめです。
投資の勉強になりにくい
ETFは良くも悪くも「指数に関係するものは全部買ってしまえ!」という考えが根本にあります。
それによって個人投資家は、投資のリスクを手軽に減らせるのですが、インカムゲインの減少などの副作用が発生することも、理解しておく必要があります。
効率的に資産を増やすという観点から考えると、ETFだけではその目的を達成できないかもしれません…。
一方で、「よし!投資で稼ぐぞ!」と思って、いきなり儲けがでるほど、投資は単純ではなく、知識と経験の積み重ねは割と重要です。
勉強せずに平均値が取れるなら最高じゃないですか?
こういった意見もありますが、まさにそのとおり!
このように考えている人には、ETFほど最高の投資商品はありません。
どのくらい投資や資産運用に踏み込んで行きたいかが、重要なのかもしれませんね。
ETFは手数料を減らすが正義
この記事では、ETFのメリットとデメリットを個人投資家の目線で考えてきました。
その中で「運用管理費が発生する」というデメリットがありましたが、こちらは最重要課題ですので、改めてお話をしておきます。
というのも、手数料とは投資において、無駄でしかないコストです。
反対に、手数料を減らせれば、その分が利益になって返ってくるため、投資パフォーマンスが向上するとも言えます。
どうしてか、大きな買い物をする時には「コスト」について考えませんが、投資でも同じことが言えそうです…。
知っている人は得をして、知らない人は損をし続けます。
運用管理費の差とは?
では、手数料がどれくらい投資の成績に影響を与えるか、簡単に比較で説明してみます。
運用損益は一切考慮せずに100万円をETFに投資したとしましょう。
運用管理費が0.1%と1%のETFを10年間運用すると、ご覧のように9万円前後の手数料の差が発生します。
グラフのとおり、手数料というのは、パフォーマンスを押し下げる効果を持っています。
投資家が利益を出すためには、押し下げられた金額以上の値上がりを目指す必要があるということです。
つまり、手数料が1%のETFは、最初からパフォーマンスが低くなりやすい可能性があり、場合によっては投資の高い壁になってしまいます。
手数料でめちゃくちゃ損をしていたかも…
そう思った人は、今からでも遅くないので、同一サービスで見直すのも良いかもしれません。
「同じサービスでも、こんなに手数料の差があるの?」と思われるかもしれませんが、ネット証券・総合証券・銀行窓口など、利用先の違いによって、このような状況はあり得るんです…。
私の経験談からお伝えすると、ご両親が銀行窓口で手数料がかなり高い投資信託を買っている場合とかもありますよ。
他の手数料も減らせる
運用管理費については比較することが大切です。
一方で、ETFに投資するときには、他にもご覧のような手数料が発生します。
- 購入時の手数料
- 売却時の手数料
このあたりのコストも工夫次第で減らすことができますので、この記事を読んで「ETFに投資しても良いかも」と考えた人は
こちらも参考にして、無駄なお金をできる限り支払わない投資をしてはどうでしょうか?
個人投資家になるなら、あらゆる手数料は天秤にかけて最も有利な立場から投資ができるようになりましょう。
証券会社を選ぶポイントはご覧のとおりです。
- 全体的な手数料の安さ
- 取扱銘柄の豊富さ
- 提供しているサービスの豊富さ
ネット証券の手数料を徹底的に比較した「株式投資におすすめ証券会社9選の手数料を比較【選び方も提案します】」という記事も参考になるはずです。
ETFの長期投資はデメリット?
ETFは長期投資に向かないと聞いたことがあるんですが、本当ですか?
ETFで安全な長期投資を検討している個人投資家は、このような疑問を感じているはず。
この情報は半分正解・半分間違いかと思います。
経費率が高いとデメリットあり
先ほど、説明をしたとおりで、ETFに投資することで発生する運用管理費はパフォーマンスの観点から考えると非常に重要。
というのも、運用管理費は毎年(厳密には日割り計算で)発生するコストであるため、利率が高いETFは保有期間が伸びるほど、投資パフォーマンスを下げる可能性が高くなります。
何度も繰り返しになりますが、運用管理費が安くて、バランスのとれたETFを選ぶことが何より大切です。
そういったETFなら長期投資をする価値が十分にあります。
投資信託と比較すると?
今度は、ETFを投資信託と比較する場合のことを考えてみましょう。
種類なら投資信託にメリットありだけど…
国内で販売されている投資信託は6,000本ほどあると言われているのに対して、ETFは220本となっています。(参考:日本証券取引所 現在の上場ETF銘柄数)
そうなんだ!
投資信託なら自分に合った最良の商品と出会えるかも!
と感じるかもしれませんが、本当に6,000本から選びきれますか?
種類は少ないETFですが、投資内容が分かりやすく、投資対象も債権・石油・金(ゴールド)など広くカバーしているため投資信託に劣りません。
結果的に、投資商品を選びやすいというメリットもありそうです。
ETFはiDeCoの対象外
iDeCoって投資信託しか選べないですよね?
ETFだけだと損しますか?
これはそのとおりです。
運用益の非課税、そして掛金の所得控除を受けたい個人投資家は、iDeCoを利用するべきですが、投資対象は投資信託のみです。
このような投資制度の恩恵をETFでも受けたい場合には『一般NISA』を利用するようにしましょう。
一般NISAは所得控除の対象になりませんが、利益はすべて非課税になり、投資の自由度も高めです。
ちなみにですが、『つみたてNISA』は金融庁が指定する投資信託や債権などが投資対象になります。
投資信託の恩恵を受けるなら、一般NISAを選択することをお忘れなく!
ETFに向いている人・向いてない人
ここまでのETFのメリットとデメリットの話をまとめると、ETFへの投資に向いている人・向いている人のタイプが浮き彫りになってきます。
手軽に投資をしたい投資家
- 手軽に分散投資をしたい
- 低コストで分散投資をしたい
- 投資の勉強はあまりしたくない
- 平均リターンがあれば十分
パフォーマンスを目指したい投資家
- 自分でポートフォリオを組みたい
- 自分でコスト管理ができる
- 投資の勉強も積極的にやりたい
- 平均リターン以上を目指したい
自分の性格を考えながら、どのようにETFと関わっていくか考えたいところです。
また、ETFに100%集中する必要もなく、個別銘柄や投資信託といった他の投資商品との組み合わせによって、バランスを取る方法もあります。
この記事ではETFのメリット・デメリットを中心に個人投資家の目線でお話をしてきました。
ETFに投資することで発生するデメリットに対しては、解消方法も提案しましたので、お役に立ったなら幸いです。